「山とそば」ほしよりこ著を読んで

『山とそば』ほしよりこ著

 

『きょうの猫村さん』で有名な漫画家ほしよりこさんの旅の絵日記です。全ページ、旅の様子がイラストと短い文章で綴られていて、ページをめくるたびにほしさんの独特の世界観が広がります。

 

本書は「山とそば」「ヘビに巻かれて」「カルデラのある町へ」「おまけ」の4編からなり、それぞれ松本、岩国・宮島、鹿児島、福島でのほしさんとその仲間たちの旅の様子が収められています。

 

タイトルにもなっている松本での旅「山とそば」では、作家のいしいしんじさんが登場。合作絵本『赤ずきん』の製作話も載っており、二人のファンであるわたしにとっては予想外の嬉しい収穫でした。そうか、あの絵本は二人のこんなふうなやり取りの中で生まれたのかと、その様子を思いがけず知ることが出来て、読みながら思わずにんまりしてしまいます。

 

また、ほしさんといしいさんの園子さん(いしいしんじさんの奥さん)をめぐる会話も微笑ましくて、読んでいるこちらもにやにや嬉しくなってきます。いしいさんの園子さんへの愛情が滲み出ていて、とても温かい気持ちになるのです。

 

また途中から、メリーゴーランド京都店の鈴木潤さんやスタイリストの伊藤まさこさんも登場。まさかこの人たちが皆こんな感じで繋がっていたのかと驚くとともに、ほしさんの絵を通して自分が好きな人たちの繋がりや日常を垣間見ることが出来て、何だか出てくる人たちを少し身近に感じられるのでした。

 

実際にあるお店やホテルの名前も登場するので、もし行く機会があったら、幾つか立ち寄ってみたいなあという場所もチラホラ。松本のお蕎麦に上高地帝国ホテルのサンドイッチ。クリームやチーズのもみじ饅頭。フルーツたっぷりの白熊も忘れてはいけません。どれもこれも美味しそうで、読んでいるとお腹が空いてくる。出たいなぁ、旅に。そんな気持ちがどこからか沸々と湧いてきて、すっかり気分は旅行モードです。

 

温泉も入りたいし、カルデラも見てみたい。東北のこけし達も気になります。いつかの自分の旅に備えて妄想はどこまでも膨らんで、ほしさんのイラストがその妄想をどこまでも具体的に広げていってくれるのです。

 

そして読んでいると、小さな子供も増えて、なかなか遠くに旅に出ることは難しいけれど、近場のちょっとした旅行であったとしてもこんな風に絵日記として残すことで、いつもの旅も何重にも味わいが増すのではないかな?という気持ちが湧いてきます。

 

画力がどうこうというつまらない考えは一度置いておいて、いつかの旅に備えて、新しいノートとお気に入りのペンを用意しようかな。楽しい旅のお供に、一本のペンと一冊のノートを携えて。

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